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いやーすごいねデ・パルマ「ファントム・オブ・パラダイス」 [映画レビュー※ネタバレ注意]

ファントム・オブ・パラダイス

ファントム・オブ・パラダイス

なんだか物凄い値段(999円…)につられつい買ってしまった「ファントム・オブ・パラダイス」。前評判は賛否両論、熱狂的なファン(映画評論家の町山智浩氏はお弁当をもって映画館に通い詰めたそうだ)がいることで知られる。しかしそういう前評判を聞けば聞くほどちょっと触手はひっこめがちとなってしまうのはなぜだろう。体調が少し良くなったので気散じにと見たのだがこれがまた…。

ファントム オブ パラダイス のあらすじ    --------------
ウィンスロー・リーチ(ウィリアム・フィンレイ)は天才的なロックの作詞作曲家だが、おとなしい若者だ。彼が最近作ったロックオペラのカンタータをスワン(ポール・ウィリアムス)という大レコード会社の社長が目をつけた。今度完成したパラダイス劇場のこけらおとしに使うため、彼は腹心の部下フィルビン(ジョージ・メモリ)に命じて横取りし、自分の曲として発表しようとする。いくら待ってもスワンからの連絡がないため、ウィンスローは彼の大邸宅を訪ねたが、折からそこでは公演のためのオーディションが行われていて、テストを受ける多勢のショーガールたちが集まっていた。ウィンスローは、順番を待つ美しい歌手フェニックス(ジェシ カ・ハーパー)と知り合う。結局、その夜はスワンに会えずさんざん痛めつけられてほおり出され、警察に保護されるが、買収された警官がウィンスローのバックに麻薬をしのび込ませたために、5年の刑を言い渡され、シンシン刑務所に投獄された。ウィンスローは刑務所内の歯科医の手で金属の総入歯にされ、醜い顔となってしまう。おとなしく刑に服すウィンスロー。だが自分の曲をスワンがろくでもないバンドに歌わせることを知った彼は復讐を誓い、刑務所から脱走し、スワンのレコード工場に忍び込み、機械を壊そうとしたが、不運にもレコード・プレッシング機にまき込まれ顔の半分をつぶされ、さらにおわれた彼は警官に狙撃され海に落ちた。顔半分と声を失うが、仮面で顔を隠しファントムとして復活。パラダイス劇場を爆破しようとするが果たして…
-----------------------------------------                 詳細はgooまで

物語は、ファウストとオペラ座の怪人(って予告編しか見たことないんですけど)それにワイルドのあの作品(ネタバレになるので一応伏せてみる)なんかをごっちゃり詰め込んで香辛料を沢山入れましたという感じ。いいかわるいかで言われればこれはもう大傑作です。もうオープニングからしてすごい。ろくでもないバンドとして登場するジューシィーフルーツ(近田春夫がプロデュースしたバンドはここが由来らしい)がオールディーズっぽいイカサマドゥーワップを胡散臭いダンスとともに適当な振り付けで歌う、そこからもう好きな人はわくわくするあの感じ―ああ好きな映画が始まるんだという安心感―を味わえると思う。その予測は裏切られないし、虚栄のかがり火以降単なる職人技のみの監督となってしまった感のあるデ・パルマの凄さ、彼がモチーフとし続けている「のぞき見しかできない男のかなしさ」がファントムが徹底的に不幸となることにより、ある種の運命に抗えない孤独へ昇華されている。その他奇天烈な人ばっかりでてくる(スワンの腹心が逆に普通と思えてくるぐらい)ところもいい。フェニックスを主役にする代わりにカンタータを完成させるというファントムとの約束を反故にしてまで選んだのがビーフとかいうエキセントリックなオカマさん(フレディ・マーキュリーとかKISSとかその辺のイメージをあわせてきびしくしたような…)だし。ウィンスローが惚れぬいて無償の愛を貫くフェニックスは歌も踊りももっさりしていて、とてもスワンがいったような「彼女は完璧すぎる。自分以外完璧はいらない」という評には同意できない有様。だがその辺の選び方がまさにイカレているからこそ、この映画を至上のものとしているのだといえる。ウィンスローは報われない。フェニックスがその愛にこたえるのは、もう彼が彼女のために曲をかけなくなってからのことだし。

私がこの物語を見て何度も何度も涙を流すのは、ただ単純にかなしいストーリーというだけではない。フェニックスとスワンがいたしている場面を覗き、片方しかない瞳を潤ませ、音声増幅機械から悲痛な叫び声をあげる、その姿は悲劇には似つかわしくなく、どちらかといえば滑稽ですらある。死さえも取り上げられたことを知り、それでも彼女のために生きようとする。そこに一途な報われぬ愛が月の光にも似たほっそりとした輝きを見せる。その切なさがひたすら胸をうつのだ。一度でイイからこんな風に愛されてみたいものです。ティストはB級もいいとこで、全編コメディテイストだったりするんだけれど、デ・パルマのファントムへの過剰な思い入れが喜劇を突き詰めた先にある本当の悲劇へ到達させているのだと、私は思う。

そして全ての悲劇が幕を閉じ、エンドタイトルに流れるのは…
「何の取り柄もなく 人にも好かれないなら 死んじまえ 悪い事は言わない 生きたところで負け犬 死ねば音楽くらいは残る お前が死ねばみんな喜ぶ」(この世は地獄さ)
まったく救いようのない話を更に強化プラスティックでコーティングするかのごとく流れるこれ以上救いようのない歌。でもだからこそ、明るくなれるのではないのだろうか。この見終わった後のすがすがしさはなんだろう。全ての罪をウィンスローが贖ってくれたからこそ、清冽な気持ちでDVDプレイヤーを終了することができる。まさに奇跡のような作品。999円は作品にたいして申し訳ないような気がする。嗚呼また今日もみようかなファントム…。

 

小ネタ話…おそらくこのスワンは「ルパン三世VS複製人間」にでてくるマモーの元ネタだろうし、「この世は地獄さ」は山田花子のマンガをはじめおそらく多くの人にインスパイアしているのでは。サントラも素敵。


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コメント 6

999って、数字にそそられます~!
明日辺り、ちょっと物色かしら?
by (2005-05-16 21:08) 

瑠璃子

切なさに身悶えしたい夜は是非…。アタシはもう見ると泣いてしまうのでしばらく禁止っす…ああでもみたいなあ。999円は失礼と思えるぐらい安すぎ。
by 瑠璃子 (2005-05-16 22:15) 

参明学士/PlaAri

TBありがとうございました。
999円は安いですね。『ファントム』という映画を私は知りませんでしたが、本文中にある作品概要の描写がわかりやすく興味を抱きました。
昔からじっくりと映画を見るということをどちらかというと苦手としている私にとって、観るということへの良い刺激になるような気がしています。
ファウストとオペラ座の怪人とその他の作品の相の子…。それだけで十分に密度の濃さは伝わってくるようです。ご紹介ありがとうございました。
こちらからもTBさせて頂きます~。
by 参明学士/PlaAri (2005-05-23 11:57) 

瑠璃子

>参名さま
こちらこそコメントもなく送りつけてすみません。nice!ありがとうございます。
デ・パルマの才気(好き勝手ともいう)が光り輝く作品です。最高傑作と断ずるのは躊躇しますが(好悪の別れる映画なので)、それでもそのひとつであることに間違いはないです。こんな値段で売られてカワイそうなぐらいっす。
他の作品のレビューを書いてTBしようかとも思ったんですが、こちらにしました。また機会があれば開催願います。そのときはキューブリック作品でいくと思いますが。
by 瑠璃子 (2005-05-23 16:22) 

ken

瑠璃子さんの分析には頭が下がります。
オレってまだまだ浅いなあ。
by ken (2006-07-19 15:01) 

瑠璃子

単なるコジツケ…ともいいます…
nice!ありがとうございます~♪
by 瑠璃子 (2006-07-24 02:05) 

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